RDDシンポ(行動計量学会)

朝日,NHK,統数研のRDDの報告があり,いくつか議論できたが,ひとつ確認を忘れた.朝日RDDがPSUの番区2を抽出する際,電話帳掲載数を元にしたデータベースを使用することは確認できたが,これを第一次抽出単位として確率比例抽出しているわけではない.
Waksberg法では,第一次抽出で番区2を確率比例抽出する.第二次抽出で各番区から同数を抽出する,問題は番区2のサイズが未知なので手間がかかることで,その代替案として電話帳掲載数を使うことでサイズを既知とする方法が考えられる(朝日は番区地図と呼んでいた).使用電話数の大きさに比例させず,掲載数に比例させて第一次抽出をするわけである.もし研究調査が可能なら両者の比較調査の結果を知りたい.
朝日RDDでは紙面解説にあるように,第一次抽出で市区町村(1145)を抽出し,第二次抽出で番区2を抽出し,第三次抽出で加入番号を同数抽出し,第四次抽出で世帯から有権者個人を抽出する−−という四段抽出法になっている.
想像に過ぎないが,掲載数に比例させる弊害を市区町村の抽出によって補いたいという欲求が働いていると思われる(市区町村を四層に分けてweight集計することにも関連しているであろう).それが複雑な抽出計画になっている理由である.フロアからの指摘のように抽出ステージを増やすことによる誤差の増大という理論的欠点を背負ってしまう.調査員が地理的空間を歩く必要がないという電話調査の現実的利点を減少させてしまう.
地理的概念である市区町村と,論理的概念の番区という2つの地点概念の斜交の程度が大きい.
一方,統数研はシンプルである.番区4とACCの組合せをすれば,二段抽出の効率を達成できるとすれば美しい標本計画となる.朝日RDDの四段抽出が複雑に見えてくる.統数研の淡白さと朝日のしつこさは,実査にも反映するのであろうか?.統数研の回収率は34%(首都圏)で,朝日の最近の回収率は60%台(全国)である.朝日の首都圏の回収率はもう少し低いとしても,かなりの差である.実用化までの研究期間に4年.食いついたら放さない朝日の執念の回収率は尊敬に値する.