ことし(2005年)は,国勢調査の年である.わが国における通信環境が急激な 進展を見せる中で,私はこの唯一の世帯全数調査において,電話(固定・携帯)や インターネットなどの利用状況を調べて欲しいと述べてきた.

しかし,調査票の予定内容をみると,それは含まれていない.残念である. せめて内閣府のすべての1万人程度の標本調査の属性ページに電話の質問が入ること を願う.

個人情報保護法がいよいよ施行された.住民基本台帳や選挙人名簿の閲覧に関する法改正も 一部で検討されている.
しかし,一方で国家による個人情報の把握は依然として徹底的である. とくに税徴収を目的としている分野である. 秦の始皇帝から既に個人情報の把握による徴税はされてきた. 数年前から確定申告しているが, よくも私のことをこれだけ調べたものである,と思った. 義務だと思って税金を払っている.しかし年間たった数十万円の講演料や講師代 なのに,十万円も追加税金を払うのが心情的に納得できない. 確定申告書を書く時間も,毎年忙しい時期でもったいない. 一回200万円以上でないと講演を引き受けない大評論家から,しっかり 徴収すればいいのだ.

国勢調査にかかる費用は国民の税金が使われる.その結果は国民の共有財産である. ところが政府は財団法人を設立して, 国勢調査の結果データを高額で販売する商売をしている. 調査費は税金を使っておきながら・・・. 税金で作成されたデータで利益を得る法人・・・. きっと私の知らない誠実な根拠があると期待するけれど.

経済・産業の活性化のためには,さまざまな調査(サーベイ)が必要である.しかし 現在,調査のために個人情報を使うことには抑制的な雰囲気がある.このツケはいずれ 社会に戻ってくるだろう.

もとより,個人情報の保護は重要である.当然だ.しかし適切な運用も重要だ. サンプリング台帳の閲覧を禁止するのであれば,代替手段が使われる.それに 必要な母集団に関する「非」個人情報は準備しておかないと政府は失敗する.

総務省からのメールで,2005国勢調査への有識者コメントがまとまったこと を知った.
・4月4日「国勢調査に期待する(学識経験者からのコメント)」   
電話のことに触れた人はいない.2世帯住宅を問題にした人の感覚が私に近い. 電話世論調査で標本抽出する場合には,電話世帯の状況が重要なのだ. カバレジ・エラーが十分小さいことが前提なのだから.