早稲田のIT化

早稲田大学で非常勤講師をはじめた1999年度に比べると,この5年でかなり進歩したように思 う.

非常勤で,講義資料を配布するのに,最初の年は事務所に「3日前」に原稿を出して印刷を頼んでいたが,まず3日も前に原稿を出さなければいけないという大学の「のんびりさ」に驚いた.かなり時代遅れの大学だと思った.つぎに,あがってきた資料が丁合されていない.教室に並べて学生にぐるぐる回らせてとらせろ,というアドバイスを誰かから聞いたが,まったくの時間の無駄である.頁数が増えるに応じて「時間の無駄」が大きくなる.

そこで会社を出てから夜に大学に来て,自分で整理してホチキスでとめたのだが,腰が痛くなった.自宅のプリンターでやってみたこともあるが,スピードが遅いし,プリンターが熱くなって紙がカールするし,用紙代が給料を超えてしまう.二度とやるもんかと思った.会社でもやらないような作業をしてしまった.教授は一国一城の主であるが,コピーも自分でとらないといけないようだ.秘書を雇えるようにならないと大変だろうなと思った.

つぎに,PC教室に授業用のフォルダを作成して,そこに資料を置くことにした.学生はそこから自分のリムーバブルディスクにコピーするということだが,これも毎週,教室に出かけて,教員卓からファイルをコピーするのが面倒で1年でやめた.

だから,大学に教員用のサイトのサービスができたら,すぐにHPを作った.しかし非常勤講師は容量制限があって,大きな資料は置けなかった.そうこうしていたら文学部のサーバーが使えるようになって引っ越した.

だんだん便利になってきた.世間と同様の情報力を得てきた.しかし非常勤の私は自宅からサーバーにUPしたいのだが,これがまた問題.ダイヤルアップしかできないのである.常勤であれば学内から作業するだけなので,あまり自宅から操作する必要はないということであろう.大きなファイルをUPすると遅い,遅い.BB時代にこれはないよなあ,と思っていた.

しかも,Bフレッツとモデム回線は相性が悪くて,いちいちPCを再起動しないと接続できなかったり,最悪なのはフリーズするのだ.最初はPCがウイルスに感染したのかと思ったが,どうやら違う原因で干渉しあうことのようだ.これにはかなり頭にきていた.これが最大の悪さであった.大きな資料はUPできない・・・.

ところが,今回やっとVPNで自宅から接続可能になったという.無線LANも使えるようになったので学生には朗報だ.さっそくVPN接続してみた.もうプロバイダ回線をいったん切って,早稲田に接続しなおす必要もなくなった.それに,速い!速い!.これでなくちゃあ.再起動も必要がなくなった.やっとFAXモデムも使わなくてすむようになった.快適.

それに,ことしは教室も新しいビルに移った.戸山にもいい教室があるじゃないの.ふるい教室にプロジェクター持ち込んで,スクリーンをぐるぐる出し入れしてくれていたTA君のアドバイスのおかげだ.TA君も面倒だったのでしょう.

しかし,考えてみると文学部なので情報化なんてせずに,のんびりと文学をやっていたいような気もするね.古い教室は,私の学生時代そのままだ.懐かしい.社会に出たら,学生時代のような,のんびりした時間は,もうない.そう思うから講義の不便もがまんできたが,企業経営の観点からはまったく遅れている.大学経営なのでやっていけるのだ.早稲田ブランドのおかげでもある.学費とOBからの寄付金で事業をやれるうちは,それでいい.時代なんか追いかけるな,早稲田文学部!