「世論調査のゆくえ」


Kさんから「あの話はもう論文にしましたか」と聞かれた.あの話とは,ギャラップのことである.もちろん,まだ書いていない.いま締切に追われている原稿は1つ(K),2つ(Q),3つ(M),4つ(A)・・・.
Kさんには以前,情報交換する中でいい本を教えてもらった.絶版だがamazon.comの古本屋で入手できた.

Jean M. Converse (1987) Survey Research in the United States: Roots and Emergence 1890-1960. University of California Press.

この本には,いろいろ知りたかったことが書いてある.それに加えて「彼女の本は翻訳が出ていますよ.Sudmanが言及している.質問の作り方の本です」と言われた.そうだ.コンバースという名前はどこかで記憶があった.あの本の著者であったか.私は日本橋の丸善で偶然みつけた.目立たない本である.翻訳なのに原著者の名前が表紙に書かれていない.知らない出版社である.ワープロ印字のまま印刷したような体裁の本である.訳者は医学関係の人である.斜め読みをしたところ,なかなかしっかりした内容であったので,その場で買ったのであった.

コンバース・プレッサー(1992)アンケート調査.廣川書店
Survey Questions -Handcrafting the Standardized Questionare-.

質問文の作成が芸術である−−とは日本の先輩の言葉かと思っていたら,米国でもそうなのであった.タイトルの翻訳が「アンケート」というところが気に入らないが.

Nさんは,とても元気だった.あえて元気な発言をしているかのようでさえあった.電話調査を日本で最初にやったのは,サンケイ新聞であったとは知らなかった.昭和30年代だという.いつか調べてみよう.日経が電話調査を定例化したのは,電話がほぼ世帯に普及した1980年代終わりであった.昭和30年代の普及率では,リテラリー・ダイジェストと同じ問題に直面する.私が小学生の頃に我が家には電話がなかった.

電話世論調査で「やすい」「はやい」のはいいことである.何が悪いのか.質が悪いという.面接調査における大都市圏の回収状況は悲惨である.面接でも電話でも悲惨な状況が同じなら,世論調査などやめてしまえ,というものであった.
私の言いたいことは2つだけである.第一は「やるなら真面目に一生懸命やれ」ということ.第二は「抽出法と測定法を区別して議論すべし」ということである.具体的には会場で言った.会場で言わなかったことがある.「日曜組はやめてくれ」ということである.各社で早版の降鈑時間が異なる.談合してでも日曜組はやめて欲しい,とさえ思う.
関連して,朝日は23時まで電話するという.こういうところが朝日のすごいところだ.個人的には私も23時まで調査をやりたい.しかし難しい.マスコミはテレマ協会に入っていないが, テレマ協会のHP をみると,具体的な調査時間に関する行動綱領は決めていない.「電話を受ける相手にとって妥当でない時間」にかけないというだけだ.解釈の幅は自由に設定できる.ベル,ソルコ,もしもしのHPを見ても,時間は行動綱領に定められていない.23時までやれば,苦情の数は一段と増加するであろう.きめ細かな工夫が必要である.

重み集計については,いつか決着させたい.

会場には遅刻した.娘の学芸会だったから.新幹線でかけつけたが間に合わない.シンポジウムよりも学芸会の方が大切である.